こうした動きが、わが国におけるいわゆる高利回り債市場(ハイイールド債もしくはジヤンク債)市場の形成につながっていくことが期待される。 社債市場の拡大につれて、新しいタイプの債券も開発され始めた。
1つは、償還額が代表的な株価指数の水準に連動して決まる「株価指数連動債」である。 もうつは、やはり償還額がSやNといった人気銘柄の株価に連動する「他社株転換条項付社債」である。
これらはいずれも個人投資家向けに考案されたものであり、毎年の利回りが非常に高い代わりに元本リスクをともなう、ハイリスク・ハイリターン型の債券である。 低金利の定着とITブームによる相場上昇のもとで人気を博し、1999年の発行額は1、6兆円に達した。
8、5個人向け社債発行の増加。 銀行に関して紹介した個人向けの社債発行が1998、99年に本格化し、99年の発行額は1兆円を上回った。
従来から個人マーケットを利用していた電力などに加えて、銀行やメーカーの中にも利用するところが出てきたためである。 なかでも2001年にはゴーン改革によって業績が急回復した日産自動車が、個人向けに約800億円の社債を発行して話題になった。
1口10万円から100万円程度で購入できるものが多く、証券会社の窓口で販売される。 利回りは格付けによって異なり、トリプルAで0、5%、トリプルBになると3%に達するものもあり、超低金利下で人気を博している。

しかし、2001年9月にはマイカル債のデフォルトが発生し、多くの個人投資家が損害をこうむるケースも発生した。 図118は個人投資家向け普通社債の発行状況を示したものである。
8、6私募債市場の拡大。 一方、多くの日本企業の業績悪化によって、社債の公募コストが高まるとともに公募自体も難しくなってきた。
そこで、これに代わる調達手段として2000年以降発行が増えているのが私募債である。 私募債の発行は1990年代を通じて低調に推移したが、2000年には兆円を上回り、2002年には2兆円に達したと推定されている。
株価低迷によって、エクイティファイナンスが1兆5、000億円程度に終わったとみられるのと対照的である。 8、7資産担保証券(ABS)市場の確立。
企業が保有するリース債権やクレジット債権などを裏づけにして発行される資産担保証券(ABS)は1996年に解禁になり、急速に利用され始めている。 発行する企業は特定目的会社(SPC)を設立して、保有資産を譲渡する。
SPCは資産が生み出すキャッシュフローを元利支払いの原資として、資産担保証券を発行する。 企業はこれによってバランスシートが身軽になり、また資産担保証券は企業と切り離して担保物権自体の安全性にもとづいて格付けされるため、低格付け企業にとっては魅力がある。
リース会社やクレジット会社をはじめ、メーカーや不動産会社なとe幅広い業種に利用が広がっている。 ABSの発行規模は比較的小さいため流動性に乏しく、その分、同じ格付けの社債より高利回りになるように値付けされる。
このため長期保有の機関投資家や個人投資家に好まれ、発行額は1997年度3、300億円、98年度9、660億円と増加し、99年度以降は1兆円を上回っているとみられる。 資産担保証券については第21章でも「証券イヒ」の項で詳しく紹介している。

8、8コマーシャルペーパー(Cp)市場の拡大。 オープンマーケットを通じる短期資金調達の中心的な手段であるCP市場が、急拡大している。
CPの利用は1980年代から始まっていたが、銀行の信用収縮が深刻になった90年代後半になって、その代替手段として市場規模が拡大した。 拡大の直接のきっかけとなったのは、97年秋から日銀がCPの買いオペを再開したことである。
特に98年11月からオベ対象が従来の3カ月物から1年物まで広げられたため、銀行が積極的に保有するようになった。 こうした動きを反映して、長らく10兆円前後の水準で横ばいしていたCPの発行残高は、98年末には18兆円に、そして99年末には22、6兆円へと急拡大した。
8、9急増する協調融資。 銀行貸出が減少に転じる一方で、図119に示すように、2000年以降、銀行の協調融資が兆円を上回る高水準に達している。
これは公募市場での調達が困難になった企業向けが中心で、私募債の隆盛と軌をーにするものである。 協調融資は従来、もっぱら大型の国際融資案件で活用されてきたが、それが圏内の比較的小口の案件にも使われだしたものである。
Mマテリアルやマツダなどの有名大企業も、社債公募とのコスト比較にもとづいて、最近協調融資を積極的に活用し始めた。 いわばメインパンク制度のもとでの銀行借入とオープンマーケットの中間の投資家向けの資金調達で、私募債ファイナンスと並んで「デット1「」が重要視されるきっかけとなった。
切り売りかパッケージか企業の資金調達は、畜度農家の肉牛の売り方に似ている。 メインパンクを中心とする大金融機関に資金調達の大半を委ねてきたわが国の伝統的な企業金融は、いわば牛1頭をまるまる金持ちの商人(銀行プラス商社)に農家の庭先で売り渡すような方式である。
農家はおいしい霜降り肉を得るために、肉牛を手塩にかけて飼育することに専念すれば、あとは商人が引き受けてくれるというわけである。 これに対してアメリカ流の資金調達は、農家が直接消費者に売る方式である。

牛肉に対する消費者のニーズを自ら探り、その多様なニーズを満たすために、肉牛をなるべく細分化して、特定の切り身を特定の消費者に直接売るわけである。 どちらがより優れているかは一概には判断できないが、わが国の伝統的なパッケージ方式では、メーカーは安くてよい物を作り、銀行や証券は低コストの資本を供給し、商社は輸出や物流をそれぞれ分担するシステムが大前提となっている。
そして、その分担システムは急速に崩れつつあるといえよう。 1頭丸ごと売るのか伝統的日本方式1980年代以降、日本企業は公募増資や転換社債、ワラント債の発行などエクイテイファイナンス(新株発行をともなう資金調達)を盛んにおこなってきた。
しかし、日本企業の聞には、株主資本やエクイテイファイナンスに関して財務理論に照らして誤った議論がいくつか存在してきた。 この章では、そのような点をいくつか取り上げて解説を加えることにする。
回額面発行増資と時価発行増資株式の新規発行は、発行価格によって、株式の額面で発行される額面発行、市場価格に近い価格で発行される時価発行、市場価格と額面の中間の価格で発行される中開発行に分けられる。 また、新株の割当方法は株主割当、第三者割当、公募に分けられるが、増資の発行価格と増資の割当方法の聞には次のような関係がある。
まず、発行価格が時価未満の場合、既存株主以外に割り当てると、既存株主は旧株の権利落ちによって損失をこうむるので、株主割当の方法がとられる。 商法では既存株主以外に特に有利な価格で割り当てる場合は、株主総会の特別決議が必要と定められている。
これに対して、時価発行の場合は、株主以外に割り当てても既存株主は経済的損失は受けないので(ただし、支配権は別問題)、どのような割当方法をとることも可能であるが、通常は公募形態をとることが多い。


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